食事摂取基準2015を解りやすく翻訳 「カロリー編」
年齢別のエネルギー必要量や基礎代謝に関する注意点についてまとめました。ダイエットに取り組むなら、身体活動レベルとは何か?について知っておきましょう。
1.エネルギー(カロリー)とは
1-1.エネルギー(カロリー)の定義と単位
人間が摂取するエネルギー(カロリー)は、生命維持や身体活動に使用されて、その多くは熱として身体から放出されます。エネルギー摂取量(摂取カロリー)、消費量(消費カロリー)、蓄積量は「熱量」として表示されますが、国際的に用いられている熱量の単位にはジュール(J)があります。栄養学ではカロリー(cal)が用いられることが多いです。1kcal=4.184 kJとなっています。
人間のエネルギー消費量は、基礎代謝、食後の熱生産、身体活動の3つに分類されます。身体活動は日常の生活や、スポーツ、姿勢の維持…といったことです。短期的なエネルギー収支のバランスは体重の変化で知ることができ、その時用いられるのがボディ・マス・インデックス(body mass index:BMI)と呼ばれる指数です。健康を維持して生活習慣病を予防するためには、エネルギー摂取量が足りているだけでは不十分で、望ましいBMIを維持する必要があります。
エネルギー摂取量とエネルギー消費量が等しいとき、体重の変化はなく、健康的な体格(BMI)が保たれる。エネルギー摂取量がエネルギー消費量を上回ると体重は増加し、肥満につながる。エネルギー消費量がエネルギー摂取量を上回ると体重は減少し、やせにつながる。
2.エネルギーの摂取とその消費
現代人の食品の選択は、多くの外的・社会的要素(簡単に食品が手に入ること、スナックを多く摂取すること、会合、TVを視聴しながら食べること、TVコマーシャル、安い加工食品…等)に影響され、また個人のストレスや心理的要素も加味されます。
人間がエネルギーを消費する場合は、①基礎代謝によるもの、②運動や身体活動によるもの、③食後の熱生産によるもの…と3つに大別できますが、
③食後の熱生産に関してはエネルギー摂取量のおよそ10%の熱量に該当します。
2-1.エネルギー量をどう測るか
同じ体重であるなら、必要なエネルギー量を測定する方法としては①摂取量を推定する(食事アセスメント法)と、②その消費量を測定する方法(二重標識水法などエネルギー消費量が直接測定される方法)がある。②には基礎代謝量並びに身体活動レベルの測定値に性、年齢、身長、体重を用いてエネルギー消費量を推定する方法もある。エネルギー必要量の測定にはエネルギー消費量からアプローチすることが多い。
2-2.年齢別のエネルギー必要量
身体活動レベルを「ふつう(Ⅱ)」として、基礎代謝基準値並びに参照身長を用い、エネルギー必要量を計算した場合(単位:kcal/日)
男性 | 女 性 | |
18~29 歳 | 2,300~3,000 | 1,800~2,400 |
30~49 歳 | 2,100~2,800 | 1,800~ 2,400 |
50~69 歳 | 2,100~2,600 | 1,700~2,100 |
70 歳以上 | 2,000~2,400 | 1,700~1,900 |
同じ BMI 又は体重でも、エネルギー必要量には大きな個人差があります。
3.基礎代謝量とは
人間が起きている状態で必要な最小量のエネルギー量で、早朝空腹時に快適な室温の部屋で横たわった状態で測定します。日本人の基礎代謝の平均値を用いて計算されたデータは比較的、正確であるとされています。
3-1.推定エネルギー必要量
成人(18 歳以上)の場合は、推定エネルギー必要量(kcal/日)を
計算式
推定エネルギー必要量(kcal/日)=基礎代謝量(kcal/日)×身体活動レベル
という式で計算します。
3-2.推定エネルギー必要量を求めるには
身体活動レベルは、推定エネルギー必要量÷基礎代謝量ですから、基礎代謝量と身体活動レベルを別々に推定して、この式を利用してエネルギー必要量を求める方法もあります。基礎代謝量を性別、年齢、体重、身長の関数として推定し、得られた基礎代謝量で計算します。ただこの方法ですと、別個に計算するので誤差が大きくなるおそれがあります。体重が同じならエネルギー摂取量はエネルギー消費量と同じであり、エネルギー消費量は測定可能です。しかし食事アセスメント法ですと、朝夕の体重の変化などの影響によって少な目に見積もられるという誤差が確認されています。そのために必要なエネルギー必要量は、食事アセスメントから計算されるエネルギー摂取量を使用しないで、総エネルギー消費量の推定値から求めます。
3-3.身体活動レベル
レベルⅠ~Ⅲ
身体活動レベルとは、1日あたりの総エネルギー消費量を1日あたりの基礎代謝量で割った指標です。
レベルⅠ → 生活の大部分が座位で、静的な活動が中心の場合 レベルⅡ → 座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、あるいは通勤・買物・家事、軽いスポーツ等のいずれかを含む場合 レベルⅢ → 移動や立位の多い仕事への従事者。あるいは、スポーツなど余暇における活発な運動習慣をもっている場合
※15~69歳の活動レベルの例です
年齢階級別にみた身体活動レベルの群分け(男女共通)
身体活動レベル レベル I(低い) レベル II(ふつう) レベル III(高い) 1-2 – 1.35 – 3-5 – 1.45 – 6-7 1.35 1.55 1.75 8-9 1.40 1.60 1.80 10-11 1.45 1.65 1.85 12-14 1.45 1.65 1.85 15-17 1.55 1.75 1.95 18-29 1.50 1.75 2.00 30-49 1.50 1.75 2.00 50-69 1.50 1.75 2.00 70以上 1.45 1.70 1.95 引用:健康の森
身体活動レベルは、人間が普段どのくらい身体的なエネルギーを消費しているかという目安となる数字です。身体活動レベル=エネルギー消費量÷基礎代謝量として求めます。身体活動レベルが高い人と、それ以外のレベルの人を分けて考えることは比較的容易ですが、身体活動レベルが中程度以下の人を分類するのは難しいという報告もあります。また身体活動レベルというよりは「労働形態」のよってエネルギー消費量を推定する試みもあります。
大人の身体活動レベルを知るために、健康な日本人の成人(20~59 歳、150 人)で測定したエネルギー消費量と基礎代謝量から計算した身体活動レベルを使用しました。つまり男女の身体活動レベルから全体の身体活動レベルを推定しようとすると、1.72±0.26 となり、さらにレベルⅡに該当する人たちにおいては1.74±0.26(いずれも平均値±標準偏差)であることが分かりました。
他に身体活動の強度を示す指標としては、
・メッツ値(metabolic equivalent:座位安静時代謝量の倍数として表した各身体活動の強度の指標)
・Af(activity factor:基礎代謝量の倍数として表した各身体活動の強度の指標)
などがあります。
3-4.基礎代謝基準値についての注意点
日本人でも、肥満者の場合「基礎代謝基準値」を用いると、基礎代謝量を多めに見積もることが多く、逆に、やせの場合は基礎代謝量を少な目に見積もることが多いとされています。糖尿病患者の基礎代謝量は、健康な人と同じか、5~7% 程度高い…とする報告が多いです(肝臓の糖新生等によるエネルギー消費によると考えられます)。
なお、アメリカ・カナダの食事摂取基準 34,181)では、身体活動によるエネルギー消費量を活動記録で推定する場合、身体活動後の代謝亢進によるエネルギー消費量(excess post-exercise oxygen consumption:EPOC)を当該身体活動中のエネルギー消費量の 15% と仮定して推定エネルギー必要量の計算に含めている。しかし実際には、日常生活における EPOC は極めて小さい 182)。
4.最後に
引用した『日本人の食事摂取基準2015』には成人男性だけではなく、妊婦さんやお子さんの場合の身体活動レベルやエネルギー消費量の計算方法についても詳細に触れてあります。年齢や性別によって身体活動レベルはかなり異なることに注意しましょう。