糖質オフ・糖質制限ダイエットの基礎知識アレコレ
糖質オフダイエットは多くの人が取り入れているダイエットで、実際一気に体重を落としやすい方法でもあります。しかし、同時にリバウンドしやすい面もあります。
1.現代人は糖質を過剰摂取している
日本人の主食はご飯で、また麺類を好む人も多いです。なかにはご飯+麺類といった組み合わせで食べている人も多いのではないでしょうか。また、忙しいときに簡単に食事を済ませようと思うと、菓子パンやカップラーメンになります。これもまた糖質が多く、糖質中心の食生活をしている人が多いです。また、よく食べる人ほどご飯の量でお腹を満たす傾向にあります。日本の飲食店でお代わりできるのはだいたいご飯なので、大食漢の人は栄養バランスとして糖質が多くなります。
1-1.栄養摂取が糖質に偏りがちな現代人
食べる量に関しては、減量や増量といった目的に応じて変化します。そのため、いっぱい食べること自体は必ずしも問題ではありません。問題となるのは栄養バランスです。摂取カロリーに対して糖質が多すぎると、脂肪として蓄積されやすくなります。もちろん糖質が不要というわけではありませんが、現代の日本では栄養摂取が糖質に偏りがちなので、バランスを考えると糖質は抑えた方が良いということです。
2.糖質過剰摂取時のホルモン分泌
糖質の摂取によって影響を受けるホルモンには、主にインスリンとグレリンがあります。インスリンは体内の血糖値が高まった際に分泌されるホルモンで、グレリンは逆に空腹時に胃から分泌されるホルモンです。
2-1.インスリンの役割
役割
・血糖値のコントロール
・全身に糖を分配する
インスリンは体内の血糖値が高まった際に、その血糖値を下げ、また全身に糖を分配する機能を持ちます。糖は人間の重要なエネルギー源ですが、インスリンはそれをコントロールし、全身にエネルギー源を渡しているということです。
2-2.炭水化物とタンパク質とインスリン
炭水化物は量を食べやすいですし、食べてしばらくするとまた空腹になりやすいです。逆に、肉などは量を食べるのが大変で、また空腹になるのにも時間が掛かります。これは消化吸収の早さの違いもありますが、インスリンが大いに関係しています。
炭水化物を摂取すると血糖値が上がり、インスリンが分泌されます。そうすると血糖値が下がるので、空腹になります。つまりインスリンの影響で糖質は全身にスムーズに分配され、余った分は脂肪に変わります。
タンパク質を摂取しても血糖値が急激に上昇することはないので、インスリンが過剰分泌されることはありません。その結果、少量でもある程度満腹感を感じ、またすぐにお腹が空くこともありません。しかし、タンパク質だけだと血糖値の上昇があまりないので、胃もたれするけど何か物足りない、といった感覚を持つ人は多いでしょう。肉を食べると一緒にパンやご飯を食べたいと感じる人が多いですが、それは血糖値とインスリンの影響が大いに関係しています。
2-3.インスリンはタンパク質の消化吸収を助ける
そして、炭水化物を摂取した際に分泌されるインスリンはタンパク質の消化吸収を助けます。糖質の過剰摂取はデメリットが大きいですが、過度な糖質制限は血糖値が下がり、インスリンも分泌されにくくなるので、タンパク質の消化吸収も鈍ってしまうということです。
2-4.グレリンの役割
役割
・成長ホルモン活性化
・脂肪燃焼を促す
・老化防止、アンチエイジング
グレリンは胃から分泌され、成長ホルモンを活性化させます。そして、グレリンは空腹時に多く分泌されます。現代人は常に満腹状態で食べ過ぎと指摘されていますが、それはグレリンの観点から言っても食べ過ぎになるでしょう。
2-5.細胞分裂を活性化させ、常に若々しいカラダを手に入れる
成長ホルモンが活性化すると、脂肪燃焼効果が高まり、筋肥大も起こりやすくなります。全身の皮膚や内臓の機能も高まるので、非常に重要なホルモンです。体の機能が活性化するとは、つまり細胞分裂が活発になるということです。脂肪燃焼も筋肥大もすべて細胞分裂なので、成長ホルモンは細胞分裂を活性化させています。人間の体は全身常に細胞分裂によって生まれ変わっていますが、それが滞ることによって老化が起こります。
若いうちはどんどん細胞が入れ替わるので肌も筋肉も強く若々しい状態ですが、細胞分裂が滞ると皮膚や筋肉が生まれ変わらず、古い細胞が滞留してしまいます。その結果、弱ってしまうということです。そのため、成長ホルモンの分泌を促すグレリンは老化防止ホルモン、アンチエイジングホルモンなどとも呼ばれます。もちろん成長ホルモンが活性化する原因はグレリンだけではありませんが、グレリンも体にとって重要な役割を担っています。
3.ベストな糖質摂取量
3-1.栄養摂取の重要度ピラミッド
その人の体重や運動状況、目的によってベストな糖質摂取量は変わってきますが、ある程度の目安はあります。基本的には、1日の摂取カロリーをまず決定し、次にPFCバランス(三大栄養素のバランス)を決定します。PFCバランスとは、タンパク質、脂質、炭水化物の割合のことです。摂取カロリーの中で、何をどれだけ摂取してそのカロリーを達成するかを考えます。
3-2.1日の消費カロリー
上記計算サイトで体重70kg年齢30歳の人の場合、だいたい1日の消費カロリーは基礎代謝が1600kcal程度、活動も含めた合計消費カロリーが2500kcalといった感じです。年齢や運動量によって個人差があるのでぜひ一度自分の1日の消費カロリーを上記サイトで計算してみてください。
体重70kg年齢30歳の人の場合、1日に2500kcal摂取すればカロリー収支はゼロになり、太りも痩せもしません。厳密には、体重が変わりません。カロリー収支がゼロの状態でも筋トレを行えば脂肪燃焼と筋肥大の効果があるので、その場合は体重が変わらずに筋肉質になっていきます。
3-3.摂取カロリーのコントロール
体重を減らしたい場合は摂取カロリーを2000kcal程度に抑え、逆に体重を増やしたい場合は摂取カロリーを3000kcal程度にします。極端に減らすと体が飢餓状態になって機能低下しますし、逆に極端に増やすと脂肪ばかりが増えてしまいます。そのため、消費カロリーの+-500くらいで計算すると良いでしょう。
3-4.PFCバランス
次に、PFCバランスを考えます。しかし、これについてはいろいろな意見があり、明確な正解はありません。あくまでも目安です。
PFCバランスの例
P(タンパク質):F(脂質):C(炭水化物)=1.5:2.5:6
P(タンパク質):F(脂質):C(炭水化物)=4:2:4
P(タンパク質):F(脂質):C(炭水化物)=3:2:5
P(タンパク質):F(脂質):C(炭水化物)=2:2:6
P(タンパク質):F(脂質):C(炭水化物)=3:3:4
P(タンパク質):F(脂質):C(炭水化物)=2:3:5
などいろいろな意見があります。目指す体型によっても変わってきますし、現状の体型によっても変わってきます。基本的には、ダイエット中はタンパク質の割合を多くし、脂質と糖質を抑えます。
逆に、増量中は炭水化物の分量を増やし、タンパク質と脂質もしっかりと摂取します。明確な正解はありませんし、筋トレ上級者ほど過度なタンパク質摂取にこだわらない傾向にあります。
3-5.めんどくさければカロリー収支だけ考えればOK
ダイエットで一番重要なのはカロリー収支なので、PFCバランスなど考えるのがめんどくさい方は、1日のカロリー収支をマイナスにする事だけを考えればOKだと思います。一般人であれば、カロリーコントロールするだけでも十分に効果がでます。
僕も、めんどくさがり屋なので、カロリー収支のみ記録をつけていましたが、それでも1年で90キロから76キロまで、14キロほど減量できました。僕が記録していた時のExcel表は下記記事で公開しています。
3-6.日本人の食生活におけるPFCバランス
例えばセブンイレブンの幕の内弁当は、
カロリー:740kcal
タンパク質:23.1g
脂質:22.3g
炭水化物:111.8g
引用:eatsmart
P(タンパク質):F(脂質):C(炭水化物)=1.3:2.7:6.0くらいの割合になります。幕の内弁当は、コンビニ弁当の中ではかなり栄養バランスの良い内容ですが、それでも脂質過多の傾向ですね。ここで補足説明を。
1gあたりのカロリー
タンパク質:4kcal/g
炭水化物:4kcal/g
脂質:9kcal/g
幕の内弁当の栄養バランスで言えば、タンパク質と脂質はグラム数で言えば変わらない数値ですが、カロリー換算だとダブルスコアの差が出ます。
4.糖質制限の際はタンパク質と脂質で補う
カロリー収支の考え方と、PFCバランスは上述の通りです。まずはカロリー計算が前提に来るので、糖質制限をする場合はPFCバランスを調整して摂取カロリーを守る必要があります。
4-1.飢餓状態は避ける
糖質制限と同時にカロリー摂取量まで過度に制限すると、体が飢餓状態になるので脂肪を燃焼しにくくなります。飢餓状態で糖質を摂取するとすぐにリバウンドします。ずっと低血糖状態で人生を終えるわけにもいかないので、体を飢餓状態にすることは避けた方が良いです。最終的に体調不良で倒れてしまうか、リバウンドするかを選択するような状況に陥ります。そのため、糖質を制限した分は他の栄養素で補ってください。
4-2.過度な糖質制限のデメリット
デメリット
・体も脳も働かなくなる
・体臭が悪化
また、そもそも過度に糖質制限することはおすすめできません。低血糖状態で体も脳も働かなくなりますし、ケトン体が発生すると体臭が悪化します。ケトン体とは脂肪や筋肉を燃焼してエネルギー源にした物質ですが、糖質が不足するとそういったことが起こります。
ケトン体ダイエットといってダイエット法としても確立されていますが、デメリットも多く、リバウンドする可能性も高い方法になります。身体から異臭を発するような事態なので、その点は明らかにデメリットです。
5.良質な脂質を摂取する
ダイエット時には脂質は悪者扱いされがちですが、良質な脂質は体にとって必須です。五大栄養素に入っているので必要なのは当然ですが、脂質が不足すると肌の潤いがなくなり、筋肥大も起こりにくくなります。
脂質はホルモン生成に特に重要で、そのなかでもテストステロンの原料になります。テストステロンは善玉の男性ホルモンで、筋肥大のためには必須のホルモンです。テストステロンがあるから男性の筋肉は大きく成長するので、脂質を摂取しないという選択肢はありません。
ただし、マーガリンやスナック菓子に含まれるトランス三脂肪はあまり摂取しない方が良いでしょう。果物や自然の食材に含まれる良質な脂質を摂取するようにしてください。
6.糖質オフダイエットは太っている人の特権
上述の通り、糖質オフダイエットはデメリットが多いです。しかし、もともと肥満の人の場合は、脂肪が燃料として大きな役割を果たすので、ケトン体として変化させなくてもエネルギーが枯渇しにくくなります。逆に痩せている人が糖質オフダイエットを行うと、少ない脂肪と筋肉を燃焼して体はなんとかケトン体を作り出そうとします。つまり、飢餓状態に陥っているということです。
7.まとめ
糖質オフは、あくまでも糖質の量を適正にするために行うことであって、糖質を過度に制限して栄養不足にすることが目的ではありません。日本人は糖質が過剰摂取になっているから抑えているだけなので、その点を勘違いしないようにした方が良いです。
イラスト/オオノマサフミ