筋トレを行うと、体が硬くなる気がするけど、気のせい?
長期間筋トレを行っていると、筋肉の発達が感じられるのと共に、体の柔軟性が失われて硬くなってしまったと感じる人は少なくありません。これは本当に、筋肉が硬くなってしまったのでしょうか?それとも何か別のことが原因なのでしょうか?
1.筋トレ自体に体が硬くなる要素はある?ない?
1-1.そもそも筋肉は、体の柔軟性を損なわせるものなのか?
「筋肉といえば硬いもの」。そうしたイメージが何故か定着してしまっています。ですから、筋トレをすることで、本来の柔軟性は失われてしまうのではないか、という疑問や不安の声もよく耳にします。
しかし、ちょっと待って下さい!柔軟性を特に重要視する、体操の選手の体を思い浮かべて下さい。彼等の体は、体脂肪率が10%未満であり、筋肉の塊と言っても過言ではありません。しかし、その身体から生み出される技の数々は、柔軟性があってこそ可能なものです。そして、同じく相撲力士の体も想像してみて下さい。彼等の体も、実は脂肪よりも筋肉量の方が多く、それでいて股割り(180度近い開脚)が可能なほど、体が柔らかいのです。つまり、筋肉が増えたからと言って、必ずしもそのせいで体が硬くなる、とは言えません。
1-2.勿論、部位によっては体が動かしづらくなることもある
勿論、筋肉の付き方やその付いた場所によっては、体が硬くなるのと同じ状況になることはあります。よく言われるのは、三角筋。これは肩の前面を覆う形になっていますから、ここに筋肉がつくことで、肩が上げづらくなるケースです。ですがこれも、単に関節の動きを筋肉が邪魔をしているからであり、筋肉が硬いために柔軟性が失われたということではありません。つまりスポーツ選手などは、そのスポーツに使う筋肉を意識し、それに見合った筋トレを行っているために、柔軟性と力強い筋肉を共存させているのです。
1-3.偏った筋トレをしているから体が硬くなった可能性も
もう一点考えられるのは、偏った筋トレをすることで、本来の筋肉の持つ柔軟性が損なわれ、結果的に体が硬くなるケースです。偏った筋トレの最たるものが、パーシャルレップ法のみを行う方法です。
しかし、本来の筋肉の動きというものは、様々な部位の筋肉が連動しあって生み出されるものですから、このパーシャルレップ法のみを行い続けると、特定の部位の筋肉は鍛えられても、他は鍛えられていない――本来は全体の筋トレを行うことで同時に生み出される柔軟性が損なわれかねないのです。勿論、パーシャルレップ法が間違っているわけでは決してありません。
パーシャルレップ法とは?
パーシャル(partial)は「部分的」という意味です。
ウエイトトレーニングを行っていると、最後の方で限界に近づくとウエイトを最大収縮・最大伸展まで動かせなくなります。この際に可動域を「部分的に」制限する、つまり残った力で動かせる範囲で小刻みにウエイトを動かし、限界まで筋肉を追い込むトレーニング法になります。この方法は筋トレを1人で行い、限界まで筋力を使い切りたい場合にオススメのトレーニング方法になります。
関連したトレーニング方法に、フォーストレップ法(補助してもらって追い込むトレーニング法)があります。
1-4.筋力と柔軟性を兼ね備えるには何が必要なのか
では、筋トレを行う時に、何をすれば柔軟性を損なわずにすむのか、という点が気になりますが、それはずばり、ストレッチです。
ストレッチを筋トレの前後に行うことの重要性は、これまでに何度も議論されてきていますが、現在では筋トレの前後にストレッチを行うことで、より筋トレの効果を倍増し、かつ傷ついた筋肉の回復にも効果が見込めるという考え方が主流になっています。
2.筋トレの前後にストレッチが欠かせない理由
2-1.筋トレ前のストレッチにはどんな効果が期待できるのか
では、筋トレ前のストレッチの効果について見てみましょう。ストレッチは、凝り固まった筋肉や関節を和らげ、身体を本来の状態に戻す効果のある運動です。これを筋トレ前に行うことで、体が温まり、加えて固まった筋肉や関節が柔らかくなり、筋トレの効果をより高める効果が見込めます。いわゆる準備運動・ウォームアップと考えて差し支えがありません。
筋トレ前のストレッチについては、一つ、忘れてはいけないポイントがあります。
それは筋トレ前のストレッチは静的ストレッチではなく動的ストレッチを行う、という点です。静的ストレッチは後に触れますが、これは筋トレ後に行ういわばクールダウンの効果を得るためのものです。今から体を鍛え抜く、という前段階には適していないどころか、筋力の低下に繋がる可能性が高くなります。
2-2.筋トレ前に行う動的ストレッチ
では、動的ストレッチとして、どんな運動を取り入れるべきなのでしょうか?そもそも動的ストレッチとは、体や関節を温め、動きやすくするための運動を指します。軽くジャンプを繰り返して血の巡りをよくしたり、上半身を大きく回して、各関節の動きを滑らかにしたりと、子供の頃に水泳教室の前に行ったような準備運動、これ等がまさに動的ストレッチの最たるものです。特にこれから鍛えたい筋肉の周囲に対して、十分温まり、可動域が広がることを意識しながら行いましょう。
ただし、動的ストレッチはあくまで準備体操に当たる運動です。この時点で痛みが生じた場合はその日の筋トレは見送ること、そしてここで無理をして体力を消耗しすぎないよう注意しましょう。
2-3.筋トレ後に行うストレッチの効果とは
先にも触れましたが、筋トレ後に行うべきストレッチは、動的ストレッチの逆の静的ストレッチです。静的ストレッチは、筋トレ後で傷つき発熱している筋肉を冷まし、かつ力が入った状態で強張ってしまっている関節などを、もとの状態に戻すための運動です。
更に言えば、静的ストレッチを行うことで、張り詰めた筋肉により、血管が圧迫されて循環しづらくなっている血流を促進が期待できるため、蓄積された乳酸の排出にも役立つと考えられています。
2-4.筋トレ後のストレッチはどう行えばいいのか
動的ストレッチが準備運動なら、静的ストレッチはまさに整理運動です。
ですから、ゆっくり時間をかけて、呼吸と脈拍を整えるために、力を入れずに行うことがポイントになります。そしてここで行いたいのが、まさに柔軟体操の動きです。はずみを付けず、痛みが出ない程度の力で、ゆっくり時間をかけて、張り詰めた筋肉をほぐしていくよう意識しながら、体を伸ばしていきましょう。前屈、開脚、脇ギリギリ痛みが出ない、その体勢で10秒ほどキープをして、ゆっくり元の体勢に戻します。静的ストレッチを行うときも、絶対に痛みを無視してはいけません。
3.まとめ
筋肉を鍛えたいと思った時、どうしてもその力強さのみに注視してしまいがちです。
しかし、ただ硬いだけの筋肉では、まさに片手落ちです。
筋肉が本来持っている柔軟性を損なわないよう、是非筋トレの前後にストレッチを取り入れましょう。