筋トレだけで脂肪が燃焼!? EPOC (運動後過剰酸素消費)とは?
筋トレのような無酸素系運動だけでは体脂肪は減らない…と言われ続けてきましたが、最近になって“そうでもない”という説をよく見かけるようになりました。「EPOC(運動後過剰酸素消費)」という言葉を聞いたことはおありでしょうか?
1.EPOC(運動後過剰酸素消費量)とは
誰でも運動をすれば一時的にカロリーの消費量は多くなります。運動を終えたら体内のカロリーの消費は急にゼロになるのではなく、一定の時間はカロリー消費量が高い状態が続く…ということが分かってきました。
運動後の回復のために、身体は平常時よりもっと多くの酸素量を必要とし消費します。このことをEPOC(運動後過剰酸素消費量:Excess Postexercise Oxygen Consumption)と呼んでいます。専門家は酸素の過剰消費量の目安がEPOCであると言っています。
EPOCを知っていれば、カロリー消費が高いうちに体を動かすことでもっと痩せやすい自分に変わることができるのです。
1-1. EPOC(運動後過剰酸素消費量)はどのくらいの時間続くのか
運動をした後に体内のエネルギー消費量が多い時間が続くことがEPOCですが、EPOCは運動をやめてから1~2時間続くと言われています。つまりあなたが朝、30分間筋トレをしたとします。その筋トレを終えてから、1~2時間の間はあなたの体内のカロリー消費量は、平静時に比べて高い状態にあるので、歩いたり家事をしたり体を動かすとより多くのカロリー(体脂肪)が燃焼されるのです。
専門家によると、強度の高い運動の場合は、運動をやめてもカロリー消費量が高い状態が14時間続く…というデータも出ています。強度の高い、激しい運動の代表格が「水泳」ですが、水泳の場合、水温によって体温が奪われるので、その奪われた体温を元に戻そうとして、さらにカロリーを燃焼します。泳ぐことで消費したカロリーに加えて、体温を上げるために消費するカロリーが必要なので、痩せるのにはもってこいと言えますね。
1-2.なぜ運動前より運動後の方がカロリー燃焼率が高いのか?
激しい運動をすると身体は酸欠状態になります。無酸素運動(筋トレなど)をすると、筋肉に十分供給されなかった酸素を運動後に届けようと、酸素を取り戻す動きがあり、運動前より運動後のほうが酸素を消費する量が増加します。運動中には乳酸などの物質も出来るので、それを体内で処理するためにもカロリーが消費されます。筋肉にストレスを与える運動をしているので、筋収縮のためにアデノシン三リン酸やクレアチンリン酸を再合成したり、脂質代謝が活発になります。運動した後には誰でも身体が火照っているように感じたり、ハーハーゼーゼー呼吸が荒くなったりします。そういう時には体内で必死に酸素を取り戻そうとしているのです。
2.EPOCを活用すれば筋トレだけで体脂肪が燃える!
EPOC(運動後過剰酸素消費量)は別名「Afterburn(燃焼後)」とも言われ、日本ではあまり認識されていませんが、欧米ではワークアウトに熱心な男女が取り入れています。
2-1.EPOCを知っていればジム通いの効果が倍増に
ダイエットのためにワークアウトを30~60分行って、その後、何をしていますか?EPOCで体内のカロリー燃焼率が高くなっている時に、自動車に乗ったり、椅子に座って友達とおしゃべりをはじめてしまうとせっかくのEPOCが体脂肪燃焼に活かしきれません。筋肉を増やすためだけではなく、体脂肪を減らしたいと思っているのなら、ジム通いの後に何をするかがポイントです。
2-2.ワークアウトが終わったら「歩いて帰る」のがおすすめ
自宅から歩いて30~60分圏内のジムに通っているのなら、運動の後はぜひ歩いて帰宅するとよいでしょう。もっと遠いところにあるジムなら、マウンテンバイクに乗って通うとダイエットには大変効果的です。ジムでウェイトトレーニングやランニングをする際には、全力を使い果たしてはいけません。明日の仕事もあるでしょうから、余力を残してトレーニングを終えます。その後、自宅までウォーキングかサイクリングをして帰宅しましょう。ジムから帰宅している最中はあなたの全身はカロリー燃焼率が高くなっているので大変効果的です。
ジム通いをしていなくても、通勤時に最寄りの駅までジョギングをして、バスの中ではずっと立っているだけでもEPOCをうまく利用していることになります。女性なら自宅にてアシュタンガ・ヨーガ(アクティブ・ヨガと呼ばれる激しい運動系ヨガ)のDVDを行った後、簡単な家事をする、これもEPOCを上手に取り入れています。台所に立って洗い物をする、洗濯物を干したり取り入れたりする、風呂の掃除をする…など、軽く体を動かしているだけでも体脂肪は普段よりずっと燃えやすい状態が続いています。
3.まとめ
これまでは「体脂肪を減らすためには有酸素運動を20分以上継続して行わなければならない。運動を始めてから20分以上経過してから、体内の体脂肪が燃焼し始める」とされていたので、退屈な有酸素系運動を長時間かけて行う時間の余裕のない人は痩せにくいイメージもありました。
しかし10分間、集中して筋トレをしたりランニングをした後は、その後少なくとも数十分はEPOCと呼ばれる状態が体内で続いているのですから、筋トレの後バイクに乗って買い物へ行けば、スーパーで商品を選んでいる間中、体脂肪は効率よく燃焼していることになります。上手に利用して体脂肪を落としましょう。
イラスト/ハヤシナオユキ