早食いが体にもたらす影響とは?よく噛んで食べるメリットも合わせて
多忙な現代社会では、早食いが身に付いてしまった人も多いかもしれません。しかし、早食いには様々なリスクがあり、身体に悪影響を及ぼすことがあります。そのため、早食いを止めることで、健康的な生活を維持できるとも言えます。ここでは、早食いによるデメリットに触れながら、防止策などについても解説していきます。
1.早食いによる悪影響
1-1.肥満になりやすい
早食いをすると、肥満になりやすいと言われています。一体なぜ、そのようになるのでしょうか?端的に言えば、食べすぎてしまうからです。許容以上の食事量となるため、必然的に太ってしまうのです。
また、人が満腹感を得る時間は、食事開始から約15から20分後と言われています。しかし、早食いの人は、概ねその時間までに食事を終えてしまい、満腹感を得られなくなります。したがって、食が足りないと感じ、つまみ食いなどをしてしまうのです。
さらに、研究データとしても、早食いをすると肥満リスクが高まることが示されています。以下の図は大学生を対象とした研究のまとめですが、ひと目でリスクが高いことが分かります。
肥満になることで、最も気をつけるべきことは生活習慣病です。多忙な現代社会では食事も早く取りたくなります。まさに、生活習慣病が現代社会の病である証拠になるのかもしれません。
本研究成果は、2014年7月10日にアメリカの科学雑誌『Obesity』(電子版)に掲載されました。今回の結果から、早食いの者は早食いではない者よりも4.4倍肥満になりやすく、男性は女性よりも2.8倍肥満になりやすいことがわかりました。
引用:岡山大学 早食いする大学生は肥満になりやすい 3年の追跡調査で確認
1-2.糖尿病との関係
早食いにより満腹感が得られず、余計に食べてしまうと肥満リスクが高まります。それは糖尿病になる危険をも意味しています。肥満と糖尿病の関係は良く知られていますが、一体どういう理由で早食いが糖尿病を引き起こすのでしょうか?
血糖値を下げる物質としてインスリンがあります。これは、食事で血糖値が上がると、それに応じて反応するようになります。しかし、早食いをすると、そのタイミングがずれてしまいます。これによって食べた後に、より血糖値が上昇してしまいます。
仮に糖尿病でありながらも早食いをしていれば、余計インスリン分泌が遅れます。インスリンが元々低かったり、あるいは、正常に分泌していないのに早食いをすれば、悪循環に陥ってしまうことは、お分かりいただけるでしょう。ちなみに、食事によるインスリンの反応は、インスリン追加分泌と呼ばれています。
1-3.その他様々なリスク
肥満・糖尿病以外の早食いのリスク
・胃腸への負担
・胸やけ
・胃もたれ
・下痢・便秘
・虫歯
・口臭悪化
・めまい
・ニキビ
早食いのリスクは、肥満や糖尿病だけではなく、他にも様々なリスクがあります。中でも胃腸への負担が取り沙汰されています。たとえば、ゲップが出やすくなるので、胸やけを起こします。
あるいは、胃もたれがあります。とりわけ、夕食後に食べ物が消化しきれないと、朝起きて胃が重く、体がスムーズに動かない等があります。さらに、下痢や便秘、腸閉塞などに罹患しやすくなります。
また、口へのリスクもあります。たとえば、虫歯です。早食いをすると、唾液が少なくなり、虫歯を抑制する成分が出にくくなります。また、口臭もあります。早食いをすると、口の中が乾きやすくなり、嫌気性菌という口臭原因になりがちな菌が発生しやすくなります。
以上のほか、早食いにより血圧が急に下がり、めまいやふらつきが起こりやすくなります。また、ニキビや吹き出物が出やすくなったり、精神への悪影響等も指摘されています。早食いは、これだけのリスクがあります。
2.早食いを治すにはどうすべきか?
2-1.理想の咀嚼回数とは?
早食いを治すためにも、理想の咀嚼回数を知っておくべきでしょう。よく言われていることは、口の中に入れた食べ物は30回以上噛むということです。そして、一回の食事で1500回以上が望ましいとされています。
日本咀嚼学会の「発信」によれば、イギリスで人参とナッツの実験が行われ、どちらも30回前後まで噛むと、飲み込み易くなったようです。イギリスでも、幼い頃から30回噛むの事が理想と親等から教わるようで、もしかすると咀嚼回数の30は世界に通じるのではないか、と述べられています。
筆者 Alexander 氏によれば、この咀嚼回数は、偶然にも子どもの頃、母から「何でも 30 回は噛みなさい」とよく言い聞かされた値と同じであると付け加えています。日本だけでなくイギリスでも 30 回という数字は、古くから言い伝えられてきたのですね。30 回咀嚼は、世界中に通じる数字かもしれません。
引用:日本咀嚼学会からの発信
しかし、食べ物には色々なものがあります。たとえば豆腐であれば、すぐに噛めてしまい30回以上には決してならないでしょう。あるいは、煮物であっても非常に柔らかくなっていれば、30回以上は到底無理です。
結局、一口30回で一食1500回以上は、あくまで理想です。現実的にはそこまで噛むことは不可能でしょう。理想を頭に入れておくことは大事ですが、重要なことは食べ物を喉に通せるまで噛むということです。そうすることで、消化に余計な時間を掛けないようにすることです。
上記のことは、日本咀嚼学会の「発信」の中でも述べられています。理想は大事ですが、現実と「噛み合って」こそ、実践できることでしょう。
食品によっても健康状態によっても噛む回数は違ってきます。飲み込みに問題がないのであれば、寿司やソバを食べるときなど、噛み過ぎてまずいと感じるのであれば、美味しい範囲で咀嚼するのもよいでしょう。
引用:日本咀嚼学会の発信
2-2.食べ方を工夫する
早食い予防法
1.一口ずつ違うおかずに手をつける
2.皿を小さめにする
3.口に食べ物が残ったまま、他のものに手をつけない
早食いを防ぐためには、食べ方を工夫することも大切です。たとえば、違うものを食べて行く方法です。一口ずつ違うおかずなどに手をつけ、同じものを何口もガツガツ食べないようにすることです。
あるいは、お茶碗やお椀を小さめにすることです。早食いの最も良くない点は、余計に食べてしまうことです。元々の量が少なく、しっかり噛んで満腹感を得れば、余分な栄養摂取が減少して行くことでしょう。
さらに、口に食べ物が残ったまま、他のものに手をつけないことです。あるいは、食事途中で箸休めをし、ゆっくり味わっていくことです。これらのほか、歯ごたえを感じられる食事にすることも、早食いを防ぐことに繋がります。
2-3.なにより食事時間に余裕を持つ
早食いの大きな要因は、多忙な現代社会にもあるでしょう。スケジュールがキチッと決められた中で働く必要があり、どうしても食事時間が短くなります。立ち食い蕎麦などが典型的であり、できるだけ時間を掛けずに食べようとするでしょう。
けれども、忙しいからこそ、食事時間だけは余裕を持つようにすべきです。むしろ、食事時間を優先して確保して行くことが、大事でしょう。たとえば、会社の昼休みでも時間が決まっているのであれば、できるだけ早めに食事場所を見つけ、可能な限りゆったりした時間を過ごすべきです。
あるいは、遅い帰宅であっても、食事時間の確保を第一に考え、そこから自分のスケジュールを決めておくことです。時に食事は面倒に感じることもありますが、エネルギーを得るための大事な活動でもあります。面倒がらずに、忙しい現代だからこそ、しっかり食事時間を取るようにしましょう。
3.まとめ
早食いに伴うリスクは、結局現代社会の問題でもあるようです。仮に早食いしない人が増加すれば、生活習慣病の罹患者も減少するかもしれません。個人主義が一般的な今では、一人一人が自覚することで、全体にも健康意識は広がっていきます。「たかが早食い、されど早食い」。リスクを重々承知しながら、早めに治して行きましょう。