何もしたくない時に最適な頑張らないヨガ 「リストラティブヨガ」
疲れやストレスで緊張してこわばったままの心と身体では、ぐっすり眠りたくても眠れない…という人が増えています。そういう人にぴったりなのがリストラティブヨガです。少しでも癒されたいという気持ちの時に試してみましょう。
1.リストラティブヨガとは?
リストラティブヨガは1990年代に誕生した比較的新しいヨガです。米国のジュディス・ラサター(Judith Lasater)によって考案されましたが、ジュディスは理学療法士でありアイアンガーヨガのインストラクターでもありました。
“リストラティブ(Restorative)”とはここでは「心身回復」という意味です。枕、クッション、ボルスター等を使用して、無理のない姿勢でわりと長い時間ポーズをとります。リストラティブヨガには緊張を和らげること、身体の奥からばらけてくるような深いリラックス、そしてエネルギーの回復が目的です。
1-1.リストラティブヨガの特徴
画像引用元:Simp’Lee’ YOGAlife
アイアンガーヨガ(日本では“ハタヨガ”で知られています。静止したヨガのことで、激しく身体を動かすアシュタンガーヨガとよく比較されます)の要素をふんだんに取り入れたリストラティブヨガは、リハビリ的な要素があります。横たわった状態で、身体のどこにも力が入らないようにするポーズを作るために枕やクッションを多用します。
通常のヨガはひとつのポーズにつき、1分~長くて5分くらいですが、リストラティブヨガになりますとだいたい20分/1ポーズです。ヨガのクラスでは20分/1ポーズを4~6ポーズ行います。
無理をしない、力を入れない、心地よさをなにより重視するので、リストラティブヨガは“積極的なリラクゼーション”と呼ばれることもあります。背骨のバランスを整えるために、ねじりや前屈、後屈を意識します。ポーズの多くは枕に足を乗せる等、身体の一部を逆転させるような工夫があり、内臓の血流の増加をはかり機能回復にも一定の効果があります。
2.リストラティブヨガに向いている人
リストラティブヨガは、特に限定された用途や目的があるわけではなく、年齢、性別、ヨガの経験は問わず、どんな人でも行ってもよい“積極的なリラクゼーション”です。特に「妊婦」さんや、シニア世代、術後リハビリ、更年期障害、腰痛で慢性的に辛い思いをしている人…が実践すると効果があるとされています。リストラティブヨガは、安全さやゆったりとしたペースがあるので、妊娠中でも病気療養中の人でも気軽に取り組むことができます。
たとえば以下のような症状を自覚しているならリストラティブヨガを積極的に試してみるとよいでしょう。
2-1.リストラティブヨガはなぜ心と身体に「効く」のか?
リストラティブヨガはアシュタンガヨガ(アクティブヨガ)のような激しい動きをしないために、怪我の危険も無く安全で、高齢者や妊婦さんにも人気があります。最近ではマタニティヨガとして取り入れる教室も増えつつあります。
リストラティブヨガは筋肉を伸ばし、血圧・心拍数を低下させ、神経系を穏やかにするので深いリラックス状態を作り出すことができるのです。リラックス状態において意識は覚醒しているので、自分の内面に集中していくことができます。一般のヨガのアサナのように、ポージングという形ではなく、完全なリラックス状態に近づけるために枕やクッションを何個も使用します。そういう土台に身体を乗せることで、身体の各部分を伸ばしたり、圧迫したりできます。そして深い呼吸に集中します。呼吸を深めることで神経系統の緊張を取り除きます。
3.リストラティブヨガの注意点
リストラティブヨガを行う際には、毛布で身体をくるんだり、アイピローを手に置いて“手をつないでいる”というような安心感を持たせることもあります。これは“安心感”が重視されるからです。完全に受け身的な姿勢(無防備な状態)で行うヨガですから、人によってはその場で集中しづらかったり落ち着かないことも起こりえますが、その状態をリラックスに移行させるために枕やクッションやプロップスに身体を預けるように指導します。指導者によっては目を開けて行うこともあります。でもほとんどは目を閉じるようです。
枕・クッションを使用するのは“関節の屈曲”を行うためです。膝や足首など大きな関節を屈曲させることで副交感神経を刺激して全身の神経系の緊張が緩まります。単なるストレッチではなく、筋肉の伸縮、内臓の圧迫、ねじりも含まれるので、身体と体の凝りを1ポーズ20分かけてほぐして、気持ちをすっきりさせます。
3-1.ヨガ界のデザート
リストラティブヨガは癒されるリラクゼーションを追及するものです。別名「ヨガ界のデザート」とも呼ばれ、疲労回復に効果が高いです。リストラティブヨガでは立位のポーズはほとんどありません。枕・クッション、ボルスター、ブロック、チェア、ベルトなどを利用して身体を20分安定させて普段使わない筋肉を意識して伸ばしたり屈曲させます。
リストラティブヨガには抑うつや疲労回復、不眠症に効果が高いです。内臓や呼吸器、神経に良い影響を与えることで副交感神経が正常に回復するのを助けます。
4.まとめ
リストラティブヨガの動画は多数アップロードされていますから、参考にしながら練習してみるとよいでしょう。ヨガを行うためのブロックやクッションも販売されていますが、最初は座布団を折り曲げたり、毛布で代用しても構いません。枕を用意して、好きな音楽を選び、目を閉じてリラックスに入りましょう。
リストラティブヨガは、セラピーやリハビリ療法の一種としてストレスを軽くして全身の機能促進を期待することができます。米国では不安神経症に代表される心身症が急増していますが、リストラティブヨガはそうした人たちの間で人気が高いのです。多くのヨガスタジオで実践され、いまでは国立健康・栄養研究所は、リストラティブヨガを、不安神経症、心身症、アレルギー、乳がん、更年期障害などの改善に役立たせる研究に資金提供しています。