ランナーのための心肺・筋力向上トレーニングまとめ
ランナーは心肺機能・筋力を向上させることが重要。長い距離を走る身体をつくることができます。ここでは、ランナーにおすすめの心肺機能・筋力向上トレーニングを紹介しています。
1.ランナーでも心肺機能や筋力の向上が必要?
「散歩の延長みたいな感じで、手軽にランニングを楽しみたい」とか「ダイエットがてら、10~20分くらい走っておこう」といったように、軽くランニングをしたい程度であれば心肺機能や筋力を向上するトレーニングは必要ないかもしれません。しかしハーフマラソン・フルマラソンを完走したい、タイムを早くしたいといった場合には、心肺機能や筋力のトレーニングは有効です。
たとえばマラソン大会は、自分のペースでゆっくりゴールできれば良いわけではありません。制限時間が設けられており、一定以上のペースでゴールまで走り切る必要があります。ランナーには、それに耐えられるだけの身体づくりが求められます。
そうしてマラソンでもハーフマラソン・フルマラソンのような長距離になれば、走っている間に筋肉疲労で腕が振れなくなったり、足が重くなったりするものです。体幹が鍛えられないと上体が安定せず、結果的に腰や足など身体の他の部分への負担が大きくなってしまいます。つまり長距離を安定したスビードで完走するためには、それなりの筋力も必要ということです。筋力が足りていないと途中で走れなくなって棄権…、また中盤から終盤に力尽きて制限時間に間に合わない、なんてことになりかねません。
またタイムをあげるためには、スピードの向上が必要。制限時間内にフルマラソン・ハーフマラソンを走り切るためにも、やはりある程度はスピードアップが必要で、そのためには心肺機能の向上が欠かせません。途中で「ぜーぜー」と息を切らしているようでは、目標達成はのぞめないでしょう。それにゆっくりしたスピードでジョギングするだけでは、足などの多少の筋トレにはなりますが、心肺機能は決して向上しません。
2.【おすすめトレーニング1】ヒルトレーニング
ヒルトレーニングとは、一言でいうと坂や丘など傾斜のある場所を使ったトレーニングのことです。平坦な道と比較すると、坂を使うことにより運動の強度が上がります。そのためヒルトレーニングでは、筋力及び心肺機能両方の強化が期待できるわけです。
そしてヒルトレーニングにも、さまざまな種類があります。ここでは、おすすめのヒルトレーニングをいくつか紹介します。
2-1.ショートヒルインターバル
もっともシンプルなのは、200~300mほどの坂を9割ほどの力で駆け上がるトレーニングです。これによって下半身だけでなく、上体を支えるために上半身強化にもつながります。ショートヒルインターバルでは、坂道を5~10回1セットにしてそれを2セットほど行います。ただきついトレーニングなので、自分の体力にあわせて少ない回数から行ってもよいでしょう。
また坂道を駆け上がるトレーニングでは、フォームに気を付けるようにしましょう。負荷が大きい分、フォームも崩れやすいです。以下の動画で理想的なフォームを簡潔に解説しているので参考にしてみて下さい。
概要をまとめると、短い歩幅で跳ねるようにテンポよく駆け上がること、大臀筋(ダイデンキン/お尻の筋肉)やハムストリングス(下肢後面の筋肉)を使うのを意識することです。腰が落ちてしまったり地面をこすったりする感じの重い感じの動作であると、トレーニングの効果は失われてしまいます。
2-2.カノーヴァ式ヒルスプリント
こちらは、よりシンプルなヒルトレーニング。80~100mの急な坂を全力で駆け上がります。インターバルは十分にとり、息が整った状態で改めてスタートします。長距離のゆっくりしたランニングではできない強い刺激を筋肉に与えることが可能。心肺機能の強化にもつながります。
長距離のマラソンを行う際にも、速いスピードに身体を慣らせることは有効です。長距離を走る際に、身体が軽く感じれるようになるからです。なお、フォームについては上述の動画を参考にしてください。
2-3.リディアード式ヒルトレーニング
ヒルトレーニングといえばこの人と、名前が挙がることが多いのがニュージーランドのアーサー・リディアード氏。数多くのメダリストを育てた実績のある指導者です。リディアード氏が提唱したヒルトレーニングは、これまでに紹介したヒルトレーニングと比較して特長的なので、動画とあわせて紹介しましょう。
足のももを高く上げながら坂を駆け上がります。前もも・腸腰筋(チョウヨウキン/腰椎・大腿骨を結ぶ筋肉)を鍛えることができます。
「シカが塀を飛び越えていくような」走りを目指すトレーニング。後脚をうまく使い、強い推進力を生みだします。後脚で飛び跳ねるようにしながら駆け上ります。ハムストリングス・大臀筋を鍛えることが可能です。なお筋肉への負担が大きなトレーニングなので、最初のうちは特に解説動画のようにゆっくりしたスピードで少しずつ行うとよいでしょう。(慣れてきたら、スピードアップしてもよいです。)
ヒルバウンディングと似ていますが、こちらはより身体の上下動(高く跳ぶ動き)を強く意識します。「バレーダンサーが舞台を飛び跳ねるような動き」というとイメージしやすいでしょうか。具体的には足首をバネのようにして、上へ跳ねるようにして坂道を駆け上がります。
3.【おすすめトレーニング2】ハイニー
https://www.youtube.com/watch?v=M4jIGbBs6zc
端的に言うと、もも上げのトレーニング。ハイニーという名前の通り、ももを高くあげるトレーニングです。股関節屈筋・大腿四頭筋を鍛えることができます。ランニングの際に、「ももを高く上げる」動作を意識するというよりは、ももが上がる感覚を身体に覚えさせる意味もあります。
そのため、ももをただ高く上げればよいわけではありません。膝が地面と水平になる程度で結構です。そしてももを上げると共に、踵をお尻の下あたりに引きつけることを意識して行うとよいでしょう。
ハイニーは自宅でもできる手軽なトレーニングですが、床を強くたたくことになるので騒音になる可能性も。マットなどを用意するとよいでしょう。
4.【おすすめトレーニング3】逆立ち
子どもの遊びのように見える逆立ちですが、実のところ優秀な自重トレーニングの一種。身体全体の筋肉を鍛えることができます。長距離のマラソンでは、体幹が強くないと上体がぶれてしまいフォームが崩れ疲労が増し、それによってさらにフォームが崩れるという悪循環が生じてしまいます。
そして逆立ちでは体幹を鍛えることができるので、長距離走にも耐えられる身体づくりに役立つわけです。くわえて腕の筋力、肩甲骨回りの筋力アップにもつながるため、フルマラソンの際のように、腕を長時間振っていても疲れにくくなります。
紹介した解説動画のように、(慣れたら)片足ずつゆっくり上げ下げするとより効果が上がるでしょう。楽しみながら自宅で簡単に行えるトレーニングです。
5.【おすすめトレーニング4】フロントブリッジ(プランク)
フロントブリッジ(プランク)は、体幹を鍛えるための代表的なトレーニングです。繰り返しになりますが、長距離のランニングでは体幹の強化は有効です。フォームがぶれずに楽に走ることができるようなります。ここでは主なフロントブリッジの種類をいくつか紹介します。
5-1.標準的なフロントブリッジ
このかたちをみたことがある人も多いのではないでしょうか。体幹トレーニングの例としてよく紹介されています。フロントブリッジのやり方は以下の通りです。
1. うつぶせになる
2. 肩の下にひじをおき、ひじとつま先をたてて身体を持ち上げる
3. 身体はピンとまっすぐに、床と垂直になるようにする
4. この状態で10秒キープする
このとき、身体がそってしまったり腕の筋力で身体をささえるようにしたりすると効果が半減してしまいます。体幹を意識してトレーニングを行うのがベストです。10秒を1セットとして3セット程度行いましょう。また10秒に慣れたら20秒・30秒と時間を伸ばしてください。
5-2.片手をあげるフロントブリッジ
フロントブリッジに慣れたら片手ずつまっすぐ肩の高さまで上げるようにすると、より効果的。片手をあげることで崩れそうになるバランスを保とうとすることで、より高い負荷が体幹にかかります。
紹介した動画でも解説しているように、片手につき3秒程度(慣れれば5秒程度に伸ばしてもよい)ずつあげてキープしましょう。また手を上げる際は、上にむけてしまったり、体幹を傾けたりすると効果が半減してしまうので注意して下さい。
5-3.片足をあげるフロントブリッジ
こちらは片足をあげるフロントブリッジ。負荷が高くなるのは片手のフロントブリッジと同じ理由です。片足はまっすぐ床と垂直になるように、片手のフロントブリッジのときと同様に、身体が傾かないようにします。この状態を、片足につき3秒程度(慣れれば5秒程度に伸ばしてもよい)ずつあげてキープしましょう。
5-4.フロントブリッジがきつい場合
フロントブリッジがきつくてなかなかできない場合は、紹介した動画で解説しているように、膝をついて行うとやりやすくなります。この時、下肢はまげます。体幹は無理のない範囲で、床と水平に。その状態をキープして深呼吸を行ってください。
はじめは、このフロントブリッジからはじめて、慣れたら通常のフロントブリッジ、片手・片足をあげたフロントブリッジへとレベルアップしていきましょう。
6.まとめ
ハーフマラソン・フルマラソンのような長距離走を完走したり、より早いタイムを目指したりするためには、筋力や心肺機能の向上が重要となります。
そのためには、ここで紹介したような、ヒルトレーニングやハイニー、逆立ち・フロントブリッジなどが有効です。新しいトレーニング法を取り入れて実践することで、だんだん身体が軽くランニングが楽しくなるのを感じましょう。それがランニングを長続きさせられるコツでもあります。